2025年4月に読んで面白かった本5選
1. 石田健『カウンターエリート』文藝春秋
圧倒的な面白さと読みやすさが全身を襲う一冊。この読みやすさは本書を通貫するロジカルライティングにあるのでは。とにかく文章が読みやすい。
その一方で、本書の内容を理解するにはある程度の前提知識を要する。既にThe HEADLINEで公開されている関連記事を読んでから手に取るといい気がする。
この本はターチンの『エリート過剰生産が国家を滅ぼす』ともかなりリンクしている(実際に参照していたし)。ただし起こりえる未来の見方に違いがあると思う。ターチンの方がより楽観的にも聞こえる。それは2人の方法論の違いにあると思う。両者の共通点や違い、分析の方法など、読み比べても面白い1冊。
2. ベン・グリーン『スマート・イナフ・シティ』人文書院
「スマートシティ」ではなく「スマート・イナフ・シティ」を!
この本が主張するのは完全なスマートシティではなく、十分にスマートなシティというコンセプトだ。それはテクノロジーが万能薬として過度に期待されたり、それ自体が自己目的化するのではなく、課題解決の中心とユーザーの中心に人間があることが考えられている都市計画のアイデア。
これは日本各地で行われているスマートシティ計画にも言えることだと思う。技術の導入、「AI化」が目的化し、都市に住む人の都合が十分に考えられていない計画ではなく、住民の抱く課題や都市の持続可能性を考えたうえで適切な規模と技術を導入することが必要なんだと思う。
こうした本書の主張は『スマートシティはなぜ失敗するのか』や『スマートシティとキノコとブッダ』などとも繋がってくる。こうしたスマートシティ批判を乗り越え、新たな地平を切り拓くためのアイデアを考えるのによい一冊。
3. 向山直佑『石油が国家を作るとき』慶應義塾大学出版会
国家は石油によって作られた!
中東を中心とした小さな国はなぜ独立国家として現在まで存在しているのか?そのキーこそが石油生産だったと主張するのがこの本。研究書でかつ、ジャンルとしては歴史学?の本とは思えないくらいの読みやすさがある(内容がやさしいわけではない)。
そもそも主権国家が世界の大半を占めるようになってから数十年しか経っていないが、中でも保護領として植民地化されていた国の中でも国の規模が小さいまま独立できた国はそれ以前から石油を生産し、一定の経済的な自立が可能だったことを様々なデータや歴史的事実から明らかにしていく。まさに「石油が国家を作る」と主張する。
そもそも現在、われわれが当たり前だと思っている民主主義制度や国際秩序は必ずしも長い歴史の実践の中で受け継がれてきたわけではなく、さらにはこの先も今のまま永続する保証はないことも分かる。こうした「当たり前」を乗り越え、あるべき未来を描くための足腰を鍛えられる一冊。
4. 大谷卓史『情報倫理―技術・プライバシー・著作権―』みすず書房
インターネットやAIの時代において、なぜ「情報」をどう扱うかがこれほどまでに重要な問題となっているのか?その答えの1つとして挙げられるのが「情報倫理」という視点。日常的に向き合っている情報環境が、実は数々の価値判断や社会的構造に支えられていることを明らかにしている。
情報倫理と聞くとメタ倫理にはじまり、やや抽象度の高い議論が続くイメージだが、この本では「なぜ私たちはプライバシーを守るのか?」「なぜ著作権を気にするのか?」といった根源的な問いについて検討が進んでいく。
高度に複雑化した情報環境を生きる現在、倫理はもはや事後的に考えればいいことではなく、その最初期から十分に検討し組み込んでおく論点の1つであることが分かる。
5. キース・E・スタノヴィッチ『ロボットの反逆』ダイヤモンド社
Twitter(現X)で話題になっていたので事前情報なしで読み始めた一冊。ウィル・スミスの「I, Robot」のような話だと思ったらドーキンスの『利己的な遺伝子』やカーネマンの『ファスト&スロー』とかなり関連する議論でドーキンス好きとしてはすごく面白い読書体験だった。
この本を読むと、「浮気は男の本能だから」みたいな「本能的に〜」というサルに戻ろうとする議論がいかに馬鹿げているのか、そしてこの文明に対する侮辱であるのかが分かる。まさにわれわれは”ロボット”に反逆する術を手にすることができているにもかかわらず!
なんでもAIだAIだと言っている今だからこそ、人間が手にした武器と人間が持つ可能性にも目を向けたい。そんな一冊。

