2025年3月に読んで面白かった本5選
1. ユヴァル・ノア・ハラリ『NEXUS 情報の人類史』河出書房新社
「ハラリの著作は話半分で読むといい」とおばあちゃんが言っていた(大嘘)。逆に話半分で、敢えて単線的に人類の歩みを把握することを目指すならこれ以上に適した論者はいないと思う。それくらい惹きつけられるストーリーテリングの力とアジェンダ設定の力に感動する。
肝心の内容についてはかなり各所で言われていることを上述のように1つのストーリーとして展開しているだけと言えばそれ以上でもそれ以下でもない。
2. 田中将人『平等とは何か』中央公論新社
「平等」という概念について、過去どのような論者がどのように問題設定をしてきたのか、そして現在の論点はどこにあるのかがコンパクトにまとめられている一冊。アマルティア・センやロールズ、サンデル、ピケティと「西洋」中心に哲学や経済学がどのように平等を問題にしていったのが分かるので、各論者の原典を読み始める前に関係性や各論者の特徴を把握するという意味で読んでおくと良い気がする。
面白いのはさらに平等に関連してアファーマティブ・アクション(AA)の平等性など、最新の動向ともリンクさせられている点。
3. 入沢康夫『詩の構造についての覚え書き』筑摩書房
初めてちくま学芸文庫の中で文学・文芸に近いジャンルの本を読んだ。自分の持つ感情や表現したいことをよき感じで言葉にしたいと思い手に取った。
結論、よく分からなかった。ただよく考えてみたら書いたことがないのでそれはそうだろうなと。ただ「詩は表現ではない」ということでむしろそれ、「詩とは何か」について問い続けることこそが重要な姿勢だという示唆は他の芸事や物事への向き合い方ともリンクしそう。そういう意味ですごく面白かった。
4. ジュリアーノ・ダ・エンポリ『ポピュリズムの仕掛け人』白水社
これは面白い!名前通り「ポピュリズムの仕掛人」が政治の世界で暗躍している有り様が描かれている1冊。
日本では安全保障に関連した研究に対し、特に学術会議を中心に強い警戒感が示されることが度々あるが、既に学術が民主主義をも蝕んでいることが生々しく描かれている。
むしろこうした言論空間に無数のプレイヤーがいる状況だからこそ、「信頼できるメディア」が重要であるし、時には明確な意思を持ってアジェンダを設定したり、偽情報が氾濫する空間に良質な情報である種の対抗言論を構築していくということがより求められるのかもしれない。
5. 谷口忠大編『記号創発システム論』新曜社
CPC Campに参加した関係で再読。非常に幅広い領域に渡って「集合的予測符号化=CPC」がどのように作動するかがまとめられている一冊。
本書の内容それ自体は別として、AI共生社会が副題に入りながらも、社会それ自体に特定した記述があまり多くないことに人文社会科学の視野の狭さと内輪の文化の一部が垣間見える。
まさにこうしたAIが社会にどう浸透し、それによって社会構造、社会のゼマンティクがどう変化しているのか、していくのかを考えることは社会科学において重要な論点だと思う。理論社会学を専攻する自分としては、来たるAI全面社会において、社会の構造が機能分化から中心/周縁分化に回帰するような気がしている。

